
阿久津隆
@akttkc
2023年6月28日

旅の時間
吉田健一
読み始めた
読書日記
SPOTV NOWに入るとツインズとブレーブスの試合がやっていて3分くらい見る。3時前、布団に持っていったのは吉田健一の『旅の時間』でジェスミン・ウォードを終えて今は狭間のところなのだろう。「飛行機の中」というのが最初のやつで「この頃はロンドンを飛行機で朝立つと翌日の晩には東京の町を歩いていられる」と始まって穏やかな始まりだなと思ったら「実際に飛行機が飛んでいる時間はロンドンを朝の何時に立って東京に翌日の何時に着いたということで計算しても地球が東京の方からロンドンに向って廻転していて一時間である筈のものが刻々に縮められて行くから解らないが要するに一日を飛行機の中で過すということはその一日の意味に多少の幅を持たせさえすれば言える」と続いたので安心の吉田健一クオリティだった。この調子で時間のことがしばらく語られたあと飛行機の中での過ごし方に話が移る。
それで疲れが地上での旅行の比でなくてそれを体にこたえて感じるのは寧ろ行く先に着いて飛行機から降りてからであるが初めからそれが解っていれば空港を離陸した時から対抗する意味で飲む気を起したものがそれを自分で不思議に思うことはない。併しそれだけではなくて空中を凄まじい速度で飛びながら刻々の感じでは動揺もなくてどこか宙の一点に浮いているのも同様の飛行機の中というのは何か事件でもそのうちにありそうなのとそこにそうしている間は事実全くの手持ち無沙汰であるのがどっちとも付かない一つの状態を生じてそのような時の為に酒が作られたと考えることも許される。それは兎に角飲むのを楽むのに悪い条件ではなくてそれで谷村は飛行機がロンドンを立って以来飲んでいた。
p.8
痺れるぅ!