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@weitangshaobing
2025年5月14日

食の本 ある料理人の読書録
稲田俊輔
読み終わった
【好きなところ引用】
「アイデンティティとは、他者との相違の総和である」 という言葉を聞いたことがあります。人はそれぞれ好きなものも嫌いなものも異なり、そんな一人ひとりとの違いの集合こそが、自分自身という存在をかたちづくっているのだ、ということですね。まさに至言だと思います。(p.75)
世界各地に菜食主義の文化がありますが、これも日本人にとってはおおよそ他人事。それもあってか、日本におけるヴィーガンの評判は決して芳しいものではありません。分断どころか対立構造さえあるように見えます。双方に様々な原因はあると思いますが、根本にあるものは「普通である自分たち」と「普通ではないヴィーガン」という意識がもたらす無理解なのではないかと思っています。(p.116)
食のタブーが決して特殊な文化と見做されないからこそ、折り合いの付け方もまた柔軟かつ巧みである、ということになるのでしょう。日本人はもしかしたら、食における多様性の受け入れ方が少し不器用すぎるのかもしれません。(p.117)
ざっかけない昔ながらの飲食店で、店の片隅でそこんちの子供が宿題をしているような光景に時折出会うことがあります。そういう環境は子供本人にとってどうなのか、という議論はあるかもしれませんが、少なくとも僕は、その光景を見るととても幸せな気分になります。時折おばあちゃんであろう店の女将や従業員、時に常連客までもが、「かまって」あげると、子供はなんだか歳の割に大人びた口調でそれに応えます。(p.146)