八槙 "傲慢と善良" 2023年5月17日

八槙
八槙
@yamaki_rd
2023年5月17日
傲慢と善良
傲慢と善良
辻村深月
まる一年前くらいからちまちま読み進めている本。婚活で出会った男女の話なので自分にはまだ早い気がしているが、繰り返し読むことで感じ方の変化を楽しんでいきたい。 今日から読書再開。スタートをこの一冊と共に切ります。何年も本を読む時間と気力の確保ができていなかったので今年はたくさん読みたい。(2025/3/11追記) まず、視点入れ替えのタイミングに寒気が走った。架の視点に入った先に今まで隠されていたことがあることはわかっていたから、そこに何が待っているのかうっすら予感していて、それが怖かったのかもしれない。架のパートは一読者として人探しをする探偵を見ているようなエンタメ感があったが、真実の生活を垣間見ていくうちに自分と彼女に重なる部分が多くあることに気がついた。彼女の抱く感覚の多くに覚えがあって、自分で言うことでもないが、その全てが善良からくる傲慢さであったように思う。自分の価値を高く見積もっているからこその歪んだプライドから来る言動の数々は、痛いところを突くようで苦しかった。今の自分と少し違っていたらという言葉から始まる他人への劣等感は、自分自身にプライドを持っているくせにこれまで歩んできた人生に自信がないという一見矛盾しているようでその両立が成り立ってしまう感情から来ている。無意識のうちに自分を重ね、ああこれは自分だと思わせられる瞬間があるのはこれが初めてだった。読了後の感想で人々が述べていたのはこう言うことだったのかと理解させられた気分だ。どこまでが不文律な社会規律でどこからが個性であり自分の意思なのか、浅井リョウによる解説を読んで改めて考えさせられる。しばらく考えて、自分らしさというものを本質的に理解するまできっとわからないのだろうなという結論に至った。人間から傲慢さを払拭することは至難の業であるし、実際この作品からその変化の過程を得ることはできなかった、それは、作者の辻村美月がどうこうという話ではなく、人が何かに気付く瞬間というものはやはり体験してみないとその身をもって理解することは難しいということだ。けれどまだ自分はこの一冊から学ばなくてはならない。一度目はたしかに自分の嫌な面を突きつけられたが、逆に言うとそれだけだった。風に吹かれれば忘れ去ってしまうような軽い衝撃。それは久々の読書であまり入り込めなかったせいかもしれないし、はたまた単に自分が未だ自らの汚い部分から目を逸らしているからかもしれない。自分も変わらなくてはならない。心にしっかりと刺さるその時までこれをまた繰り返し読みたい。(3/12追記)
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved