
ちーさん。
@dokushumi12
2025年5月14日

ショートケーキは背中から
平野紗季子
心に残る一節
『基本的に食事って最初の一口が一番おいしくできている。パワフルな味わいの食べものならなおさらだ。最初が一番おいしくて、満腹に近づくにつれておいしさの感受性が鈍くなっていく。三角のショートケーキは1番面積が広くて生クリームの多い最も濃厚な部分が最後にやってくる運命にあるわけだが、そのときの受け手の状態は「もうお腹いっぱい」のことがままある。するとそれは惰性の1口にしかなり得ない。クライマックスをすぎた後の斜陽感バリバリのクリームゾーン。』
『食べものは形には残らなかった。あんなにたくさん食べたのに。すがすがしいほど、何もかもなくなった。だけど、そのかわり、思い出だけが残っている。それでいいと思える。それがすべてだと思える。もうない店。もうない味。もう一度食べたいもの。もう二度と会えない人。たべものは消えてしまうけれどもしかし、こうして思い出せる未来のあることが嬉しい。』