
もん
@_mom_n
2025年5月15日

神様 (中公文庫 か 57-2)
川上弘美
読み終わった
心に残る一節
@ 図書館
どれも現実離れした物語なのにするすると心に入ってきて、突然琴線に触れる言葉が飛び込んでくる。やっぱり私は純文学が好きだなあと思う。九つの短編の中で『夏休み』が特に好き。
佐野洋子さんの解説もとてもよく、「夢が発生する魂の場所にスタスタ平気で行って、いつまでも遊んだり、さっさと帰って来たりする川上さんは、ペンで、私達に自分の見ない夢を見せてくれて、私は実に得した気分になる」という言葉に大きく頷く。
p.23
このところ、夜になると何かがずれるようになったのである。何がずれるのか、時間がずれていくような気もしたし、空気がずれていくような気もしたし、音がずれていくような気もしたし、全部ひっくるめてずれていくのかもしれなかった。
p.27
空気は昼の熱気を残して、なまぬるい。夜の中で、自分の影がいくつも重なってくるような感じだった。
p.142
カナエさんの体じゅうが淋しくなった。体のうわっつらも中身も、ぜんぶが淋しくなった。最後まで残っていた淋しくない部分が淋しいにくるりと裏返ったとき、カナエさんは帰らない男に向かって、
「帰ってほしいのです」と呼ばわった。
