
橋本吉央
@yoshichiha
2025年5月16日

物語の役割
小川洋子(小説家)
読んでる
しびれるぜ…なんて素敵な締めくくり。
「民族も言葉も年代も性別も違う人間が、どこかで出会ったとします。その時、お互いの心を近付ける一つのすべは、どんな本を読んで育った人か、を確かめることかもしれません。もしその人が、『ファーブル昆虫記』や『トムは真夜中の庭で』や『アンネの日記』をあげたとしたら、私はたちまちその人と心を通わせることが出来るでしょう。
もう一つ贅沢を言えば、いつかそういう場面で、私の書いた小説を誰かが挙げてくれたなら、作家としてこんなに大きな幸せはありません。
もちろんその時、私はもう死んでいるだろうと思います。しかし、自分が死んだ後に、自分の書いた小説が誰かに読まれている場面を想像するのが、私の喜びです。そういう場面を想像していると、死ぬ怖さを忘れられます。
だから今日もまた私は、小説を書くのです。」

