物語の役割
56件の記録
句読点@books_qutoten2025年11月8日読み終わったちくまプリマー新書の初期の傑作。 小川洋子さんの小説執筆の方法が具体的に開示されていて、創作をする人だけでなく読者の側にも新たな視点をもたらしてくれる。 特に第二部が素晴らしい。 テーマやストーリーをあらかじめ決めてから書き始めるのではなく、言葉になる前のイメージや風景が、自分の意思ではない偶然性によってやってくるところからしか創作は始まらないという。 もちろんそうした偶然にしか思えない創作のタネのようなものをちゃんと見つけて拾い上げるためには普段から物事をよく観察し、驚き、感動する感性がなければならない。むしろ小説家というのはそうした感性を鋭くさせ、言葉にならないものに言葉を与える仕事なのかもしれない。 小説を書いている間、小川さんは死者たちの声に耳を傾けている感覚だ、と書いていたのも印象深い。物語が起こる具体的な場所のイメージも、廃墟のようなところに自分が立ち、そこでかつてどんな人たちがどんな風に生活していたのかを幻視しながら書くのだという。 自分の中から言葉を出すのではなく、じっと耳を傾け、通路のようになる感覚。自分、という意識を持たずに、観察する透明な存在になること。 誰かが落としていったもの、落とした当人が忘れ去ってしまっているようなものを丁寧に拾い上げて、細かく観察し、そこから物語を掬いとる感覚。 これを読むと物語を書いてみたくなるし、小川さんの小説も読んでみたくなる。

Readingdiary@readingdiary2025年10月31日読み終わった実家の本棚から拝借📖 小川洋子さんが好きな父に勧められた本。 「ファーブル昆虫記」と「トムは真夜中の庭で」の2冊から、小川さんは、 自己を尊重し、自分を特別だと思うこと、一方、自分は偉大な全体の一部という、ささやかで、身を任せるに足りる存在だと思うこと 一見矛盾しているようで、人間にとって必要な共存させるべき思いを学んだと書かれている。 とても心に響いた。 自己にフォーカスを当てすぎていたのかも、これまでの色んな悩みのタネはそこだったのかも、とハッとした。 読み返したい度 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎


さとう@satoshio2025年10月6日読み終わった小川洋子さんの小説に浸っていたら、「そんなあなたに」とおすすめされた本。小川洋子さんがさらにすきになった。 「自分の記憶の形に似合うようなものに変えて、現実を物語にして自分のなかに積み重ねていく。 そういう意味でいえば、誰でも生きている限りは物語を必要としており、物語に助けられながら、どうにか現実との折り合いをつけているのです。」








ヒナタ@hinata6251412025年8月31日読み終わった〈言葉で一行で表現できてしまうならば、別に小説にする必要はない。ここが小説の背負っている難しい矛盾ですが、言葉に出来ないものを書いているのが小説ではないかと思うのです。一行で表現できないからこそ、人は百枚も二百枚も小説を書いてしまうのです。 ほんとうに悲しいときは言葉にできないくらい悲しいといいます。ですから、小説の中で「悲しい」と書いてしまうと、ほんとうの悲しみは描ききれない。言葉が壁になって、その先に心をはばたかせることができなくなるのです。それはほんとうに悲しいことなのです。人間が悲しいと思ったときに心の中がどうなっているのかということは、ほんとうは言葉では表現できないものです。けれども、それを物語という器を使って言葉で表現しようとして挑戦し続けているのが小説なのです。〉 ほんとうにそうだなぁと思いながら読んだ。今はもう手元にない『博士の愛した数式』を読み返したくなる。ポール・オースターの『ナショナル『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』も読んでみたい。




momiji@momiji_book2025年6月29日読み終わったストーリーは自然に発生してくるもの、作者はそれをキャッチアップする観察者といった姿勢に納得。小川洋子作品の静かでどこか愛おしい世界観に繋がる。
海老塩@ebi_salt2025年5月20日読み終わった心に残る一節読書日記第一部に書かれている、『博士の愛した数式』が生まれるまで___には、著者が感じた数学の美しさが描かれていて、興味深かった。 物語は日常から生まれる。私は人間の最後尾を歩いていて、印を残す為に小説の形にしている。という言葉が印象に残った。

橋本吉央@yoshichiha2025年5月16日読み終わった人にとって物語とはどんなものなのか、ということに関心があって読んだ。 小川洋子さんの「人と物語論」であり、哲学的・批評的に物語と人間を語るというよりは、シンプルにご自身の経験、物語が自分の生き方にどのような意味をもたらしたのか、自分が小説という形で物語を生み出すとき何が起きているのか、ということを丁寧に、難しい言葉を使わないがとてもしっかり、こちらの手のひらを両の手で包んで大事なものを手渡してくれるように語ってくれる。 物語は、人が大きな世界の一部であり、世界に身を委ねて良いのだという全と一的な感覚と、一方で自分自身の内面世界の自由さ、それゆえ自分自身を特別なものにしてくれる意義の、矛盾するような両方の感覚を与えてくれるものである、という考え方はとても面白かった。 当たり前なのだけど、一とつひとつの言葉の選び方、締め方が素敵で、全体として「素敵な本だったなあ」と感じられる本だった。

橋本吉央@yoshichiha2025年5月16日読んでるしびれるぜ…なんて素敵な締めくくり。 「民族も言葉も年代も性別も違う人間が、どこかで出会ったとします。その時、お互いの心を近付ける一つのすべは、どんな本を読んで育った人か、を確かめることかもしれません。もしその人が、『ファーブル昆虫記』や『トムは真夜中の庭で』や『アンネの日記』をあげたとしたら、私はたちまちその人と心を通わせることが出来るでしょう。 もう一つ贅沢を言えば、いつかそういう場面で、私の書いた小説を誰かが挙げてくれたなら、作家としてこんなに大きな幸せはありません。 もちろんその時、私はもう死んでいるだろうと思います。しかし、自分が死んだ後に、自分の書いた小説が誰かに読まれている場面を想像するのが、私の喜びです。そういう場面を想像していると、死ぬ怖さを忘れられます。 だから今日もまた私は、小説を書くのです。」

橋本吉央@yoshichiha2025年5月16日読んでるいい表現だなあ… 「小説を書いているときに、ときどき自分は人類、人間たちのいちばん後方を歩いているなという感触を持つことがあります。人間が山登りをしているとすると、そのリーダーとなって先頭に立っている人がいて、作家という役割の人間は最後尾を歩いている。 先を歩いている人たちが、人知れず落としていったもの、こぼれ落ちたもの、そんなものを拾い集めて、落とした本人さえ、そんなものを自分が持っていたと気づいていないような落とし物を拾い集めて、でもそれが確かにこの世に存在したんだという印を残すために小説の形にしている。そういう気がします。」

ゆげの@hoochaa2025年4月22日買った読み終わった作家は過去を見ている、物語が進んでいくのを追いかけて言葉にしていく、みたいな話は村上春樹も言ってたなあ 博士を愛した数式が出来上がるまでの話とかも良かった

sae@sae2025年3月22日読み終わった@ 蟹ブックス自分は広大な全体のほんの小さな一部だという思いと、自分は他の何者でもない特別な一人だという思い。一件矛盾しているようで、どちらも人間にとって必要な、共存させるべき思いを、私は本から学びました。(P109)


月日@tsu_ki_hi_2020年11月15日読み終わった@ 本の読める店fuzkue初台辿り着いたフヅクエ。わたしのセーブポイント。ぽかぽか紅茶、ブランケットに包まって。 だいすきな小川洋子さんの語る言葉、寄り添って頷いてくれるようで胸がいっぱいで、いっぱい折ってしまった。













































