橋本吉央 "物語の役割" 2025年5月16日

橋本吉央
橋本吉央
@yoshichiha
2025年5月16日
物語の役割
物語の役割
小川洋子(小説家)
人にとって物語とはどんなものなのか、ということに関心があって読んだ。 小川洋子さんの「人と物語論」であり、哲学的・批評的に物語と人間を語るというよりは、シンプルにご自身の経験、物語が自分の生き方にどのような意味をもたらしたのか、自分が小説という形で物語を生み出すとき何が起きているのか、ということを丁寧に、難しい言葉を使わないがとてもしっかり、こちらの手のひらを両の手で包んで大事なものを手渡してくれるように語ってくれる。 物語は、人が大きな世界の一部であり、世界に身を委ねて良いのだという全と一的な感覚と、一方で自分自身の内面世界の自由さ、それゆえ自分自身を特別なものにしてくれる意義の、矛盾するような両方の感覚を与えてくれるものである、という考え方はとても面白かった。 当たり前なのだけど、一とつひとつの言葉の選び方、締め方が素敵で、全体として「素敵な本だったなあ」と感じられる本だった。
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