
渡辺洋介
@yskw0514
2025年5月19日

旅する練習
乗代雄介
読み終わった
小説家である「私」と中学受験に合格したばかりの姪「亜美」(サッカー少女)のふたりによる利根川徒歩旅行のロードノベル
途中挟まれる「私」による風景描写が美しい。
自分は小説を読むときは物語を味わうというよりは風景描写に心惹かれるところがあり脳内でその風景を浮かべながら旅をしているといえばよいだろうか。
「明日は雨になるそうだが、低いところの空の狭い一帯だけちょうど雲が途切れている。大きなカーブを描いた利根川の広い水面はその下に地平線をつくり、その上にまだ暮れるというには少し早そうな太陽がある」P111
「あの人おなじようにいつまでも強い風が川面を白く波立たせ、対岸には此岸と似た低い土手と、奥には小高い森が見える。木立が途切れて空の降りたところにだけ送電線が目に映る。水面すれすれを滑りかつ翻りながら何羽も川を渡ったツバメが宙へ駆け上がる」P150
こんな風なスケッチが出来るようになりたいものだ。
そして本書には仏教的な用語も多く書かれているがひとりの人間が確かにこの世に生きていた生の痕跡でもあるのだな。

