sayaka
@flow-er
2025年5月21日

春のこわいもの
川上未映子
読み終わった
表紙の絵そのままのような本だった。
一見するとそれこそ春を思わせる柔らかな美しいピンクの布なのに、包まれた空間の中ではその皺のひとつひとつにまで様々な色や粘度のこわいものが詰まっているような。
そして、それが壁に立てかけてあるところも、読み終わって見るとこわくなる。
ひとりではどうにもしがたい社会の不安定さや、生きていくことのままならなさの中で、なんとか保てていた形も壁から離れてしまえば容易にぐにゃりと形を変えることができてしまう。
意識したとしてもなかなか覗き込めないところにある自分の中のこわいものを、川上さんの温度を持つ言葉とスピード感で見せてもらったような時間だった。

