
辻井凌
@nega9_clecle
2025年5月21日

人間失格
太宰治
読み終わった
感想
この作品を読んで「どうしてこんなに自分の苦しみを太宰は分かってくれるの?」と思う人と、「よく分からない。終始退屈だ」と思う人がいるだろう。僕は後者寄りだ。でも人間や世間、生活に対して葉蔵が抱える違和感は共感できるので、退屈すぎるわけでもない。
自分には「葉蔵が語る」という視点が合ってなかった。彼になかなか入れ込めず魅力的に思えなかった。反面、はしがきとあとがきで第三者視点から書かれる葉蔵の姿は、立体的で生き生きと見えた。特にあとがきの最後の一文は秀逸だ。あの文によってこの物語に大きな救いが生まれた。
集英社文庫版には解説と、太宰の娘・太田静子による鑑賞文が収録されている。この2つがどちらも読みごたえがある。特に太田静子の鑑賞文は、この作品から読み取れる太宰の人間愛や父性が書かれた見事なものだ。太宰の自伝的作品と言われているが、太宰はもっと人間も自然も愛する人だと他の作品を読んで思った自分にとって、彼女の文章は救いになった。




