

辻井凌
@nega9_clecle
つじーと呼ばれます。読書とサッカーとラジオが大好きな書評家・文筆家。読むのも書くのも話すのも好き。歴史からあれこれ考えて読むタイプです。
- 2025年5月22日星の王子さまサン=テグジュペリ,アントアーヌ・ド・サン・テグジュペリ,河野万里子読み終わった感想「いちばんたいせつなことは、目に見えない」 読んだことがなくてもどこかで聞いたことのあるこのセリフは、あんなシーンで出てきたのかと感動してしまった。要所要所に出てくる言葉の数々がとにかく素敵だ。やさしいけど、ちょっぴりさみしくなる物語である。 素敵といえば、作者によるまえがきもいい。親友に捧げた献辞は、言い訳ぽくもあるがユーモアと親友への愛に満ちたものになっている。こういった言葉たちを読めば、きっと訳し方も素晴らしいのだとわかる。 王子さまは、方々の星で様々な人々や生き物に会う。中でも僕が好きなのが王様だ。偉ぶってそうだが、身の丈も知っている。そんな王様とのやり取りは非常にコミカルだ。舞台で見たくなるシーンである。 ところで小説に出てくるトルコの独裁者とは誰のことだろう。ケマル・アタテュルクのことだろうか。サン=テグジュペリのトルコ観を知るヒントが隠れている。
- 2025年5月21日人間失格太宰治読み終わった感想この作品を読んで「どうしてこんなに自分の苦しみを太宰は分かってくれるの?」と思う人と、「よく分からない。終始退屈だ」と思う人がいるだろう。僕は後者寄りだ。でも人間や世間、生活に対して葉蔵が抱える違和感は共感できるので、退屈すぎるわけでもない。 自分には「葉蔵が語る」という視点が合ってなかった。彼になかなか入れ込めず魅力的に思えなかった。反面、はしがきとあとがきで第三者視点から書かれる葉蔵の姿は、立体的で生き生きと見えた。特にあとがきの最後の一文は秀逸だ。あの文によってこの物語に大きな救いが生まれた。 集英社文庫版には解説と、太宰の娘・太田静子による鑑賞文が収録されている。この2つがどちらも読みごたえがある。特に太田静子の鑑賞文は、この作品から読み取れる太宰の人間愛や父性が書かれた見事なものだ。太宰の自伝的作品と言われているが、太宰はもっと人間も自然も愛する人だと他の作品を読んで思った自分にとって、彼女の文章は救いになった。
- 2025年5月19日恋愛の哲学戸谷洋志読み終わった感想哲学は、自分がかかえる得体の知れない感情に違う面から光を当てる力を持つ。7人の賢者の言葉により、恋愛は相対化され、より多面的な姿を見せてくれる。著者の狙いが見事果たされた本だ。 説明がつかず居心地の悪い感情がわいたとき、きっとこの本を再び開くだろう。恋愛を切り口にした哲学者ガイドにもなっている。僕が気になったのは、サルトル、ポーヴォワール、レヴィナスだ。現代に近い哲学者の話は、思想全体が今を生きる自分に寄りそい、共感できるものである。 「はじめに」と「おわりに」で著者が恋愛を炎にたとえている。この文がまたいい。炎を果たす役割の表現が詩的であり、哲学を炎を扱う道具ととらえて恋愛の多様性を示す。真似したい! https://note.com/nega9clecle/n/n7dee2eaafff0
- 2025年5月17日最終列車原武史読み終わった買った
- 2025年5月15日内調岸俊光感想「内閣情報機構に見る日本型インテリジェンス」という副題にひかれた。インテリジェンスには情報や諜報の意味があり、スパイの世界も当てはまる。インテリジェンス!いい響き! スパイというと派手なイメージを連想するかもしれない。でも本書に書かれているのは内閣の下で行われる地道な情報分析の世界であり、どうにかして組織の役割や居場所を確保しようとする官僚たちの世界だ。 メディアの情報から世論を分析し、これといった学者に委託調査を依頼し見解を発表してもらう。国が暗に世論を動かすというと聞こえが悪いが、国側にも言い分が世論に伝わるように努力する義務があるとすれば、世論に働きかける情報機関は必要悪なのもしれない。 内調こと内閣調査室が活動はじめた当初は「反共」の思いが政府に強かった時代だ。だからこそ必要とされた。今を生きる僕には実感がないが、共産主義はそれほどまで脅威だったらしい。では反共がなくなった現在、内調が対抗しようとするのは何になるのだろう。 https://note.com/nega9clecle/n/n767b8782c017
- 2025年5月8日バチカン近現代史松本佐保感想近現代史を学んでいると「反共」が持つ力に驚かされる。1993年生まれの自分はソ連が崩壊したあとに生まれた。だから共産主義の脅威といわれてもピンとこない面がある。カトリックの総本山であるバチカンを動かしたのも「反共」の精神だ。ここでも反共!びっくりだ。 キリスト教と対立するものとしてイスラム教をイメージする人もいるかもしれないが、バチカンの考えは違う。イスラム教は考え方は違えども、神を信じる者として信用できる。本当の敵は無神論につながり得る共産主義だ。反共のためなら融和ができる。イスラム教とも手を組める。共産主義から当時の人々が何を感じたのか、何を不気味に思ったのか知りたい。 「反共」の必要性が薄れた今、バチカンは何を軸にして世界とつながっていくのだろうか。ローマ教皇を頂点とした組織が整っているからこそ、バチカンは世界に影響力を持ち、時には仲介者としての役割を担うことができる。次のコンクラーベが楽しみだ。
- 2025年5月7日
- 2025年5月4日めんどくさがりなきみのための文章教室はやみねかおる読み終わった
- 2025年5月1日彼女がそれも愛と呼ぶなら一木けい読み終わった感想愛に何を求めるのか。他者を求めるとはいったい何なのか。自分に正直に生きるとは何か。3人の恋人と一人娘と暮らす家族を中心に登場人物の言葉が常に読者に問いかけてくる。異なる価値観の言葉に出会うことで、かえって物事の本質が見えてくる。 「恋愛とは?」、「好きとは?」、「嫉妬とは?」、「執着とは?」を考えてしまう作品だ。 https://note.com/nega9clecle/n/n5f5beca2db53
- 2025年5月1日バチカン近現代史松本佐保読み終わった
- 2025年4月29日
- 2025年4月29日人間失格太宰治読み終わった
- 2025年4月29日文化系のための野球入門中野慧感想野球と日本近代史を結びつけて、野球に関する数々の論点に切り込んでいく手法には知的好奇心をかきたてられる。この切り口が作れるのはサッカー好きとしてうらやましい。日本野球の歴史と文化の強固さを思い知った。 プロ野球にまさか「無縁」を関連づけるとは思わなかった。繋げ方がアクロバットすぎないか。このような縦横無尽な展開がこの本の醍醐味だし、自分の野球、スポーツに対する「ものの見方」を転換させるヒントになる。 https://note.com/nega9clecle/n/n33d9aa6d4326
- 2025年4月27日最終列車原武史買った
- 2025年4月27日星の王子さまサン=テグジュペリ,アントアーヌ・ド・サン・テグジュペリ,河野万里子買った
- 2025年4月27日
- 2025年4月26日アウステルリッツ(新装版)W・G・ゼーバルト,鈴木仁子感想語り手とアウステルリッツ、2人の一人称「私」を登場させ入れ子の構成にすることで、あえて読むスピードを落とそうとしている。スピードが遅くなることで、情景や語られる歴史の断片に引っかかりが生まれる。チェコというドイツではない国からナチスを見ることで残酷さが余計に際立つ。 https://note.com/nega9clecle/n/nfe566283016d
- 2025年4月26日人間失格太宰治買った
- 2025年4月26日三島由紀夫集三島由紀夫買った
- 2025年4月26日津軽太宰治買った
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