
阿久津隆
@akttkc
2025年5月11日

旅の時間
吉田健一
読んでる
読書日記
寝る前も吉田健一は続いて「東北本線」は隣り合った男と中国の話やギリシャの話やカラハリ砂漠の話をし続ける話でブッシュマンと故郷の話を読んでいたら不思議と2025年と地続きであることが感じられた。夜が明けて男が降りて終わって次は「ニュー・ヨークの町」で体調を崩して熱を出したと勘違いするほどの蒸し暑さだった。登場人物の本木は「ビールでも」と思ってバーに入った。それは「東京では子供の頃にしか見た覚えがない種類の古風なバー」だった。
昔は遠洋航海の客船のバーもそういう具合にがっしりした木材を使って出来ていてそれが暗い感じがするのが木が黒光りがしているので引き締り、更にそういう船のバーを本木に思い出させたのはこのバーも冷房したりしていなくて高い天井から吊された四枚羽の扇風機が部屋を涼しくする為でもなさそうにゆっくり廻っていることだった。このバーが本木の気に入った。そこの天井から吊されているものにこの扇風機の他に大きな懐中時計の恰好をした時計があってこれもその竜頭を中心にゆっくり廻っていて見上げていれば時間が解るのがそこの時間もその調子でたたせていた。
p.137
こういう天井の扇風機のバーはどれだったか、『本当のような話』とかだったか、誰かと浅草のバーとかでこういうのがあったような記憶があって暗い室内に高い天井とかから光が差し込んで床に光だまりができるみたいな描写があってその光がたまっている様子を思い浮かべてうっとりした時間を思い出した。本木はブラッディマリーと思しき赤いカクテルを飲んで吉田健一の登場人物っぽいことをバーテンダーに言って、バーテンダーももちろん吉田健一の登場人物の話し方で話した。