
阿久津隆
@akttkc
2025年4月29日

塵に訊け
ジョン・ファンテ
読んでる
寝る前は塵に訊く。ロングビーチで地震が起きた。「まずは悲鳴。次に塵。そしてなにかが崩れる轟音」。バンディーニは「僕のせいだ。僕がやったんだ」と思う。「お前がやったんだ、アルトゥーロ。あの部屋の、あのベッドの上で、お前がやったんだ」と思う。街灯が倒れてビルが割れる。世界の終わりがやってきたと誰かが言う。女が気絶する。
その場を離れ、歩道の縁石に腰をおろした。悔いろ、懺悔しろ、手遅れになる前に。祈禱を唱えた、だけど僕の口の中にあるのは祈りではなく塵だった。祈るのはやめた。でも、僕の生のなかでなにか変化が生じるだろう。いま、このときから、節度と厚意が生じるだろう。ここが分かれ道だ。これは僕のためだ、アルトゥーロ・バンディーニへの警告だ。
p.142
ここにびっくりした。悲惨な天災を、自分が起こしたこと、そして自分の未来のために起こったこととして扱う、エゴイスティックさを極限まで煮詰めたようなグロテスクな語りをやりきってしまうこと、それに感嘆した。