塵に訊け

22件の記録
- 阿久津隆@akttkc2025年4月30日読んでるバンディーニの仕事が上向いてきた。雑誌に掲載され、100ドルが届いた。「アルトゥーロ・バンディーニ、作家。短篇を書くことで、みずからのペンで稼ぐ男。いまは長篇を手がけている。とんでもない一冊だ。刊行前から話題沸騰。瞠目すべき散文。ジョイス以降、最大の事件」とバンディーニは考えた。そして書いた。 六週間にわたって、毎日のように、甘美な数時間を、馥郁たる三、四、五時間を執筆に費やした、ページはどんどん積みあがり、ほかのあらゆる欲求は休眠していた。地上を歩く亡霊になった気分だった、人も獣もひとしく愛する男だった、道行く人びとと言葉を交わし、彼らと交わりをもつあいだ、心地よい慈愛の波が押し寄せてきた。全能の神よ、親愛なる主よ、お願いします、甘い言葉を語る舌をお与えください、この悲しく孤独な人びとに私の話を聞いてもらい、幸せになってもらいたいのです。かくのごとく日々は過ぎた。夢のような、光あふれる日々、ときおり偉大で静謐な喜びがやってくると、僕は部屋の明かりを消して泣いた、するとたいてい、死にたいという奇妙な欲求にとらわれた。 p.163 「夢のような、光あふれる日々、ときおり偉大で静謐な喜びがやってくると、僕は部屋の明かりを消して泣いた、するとたいてい、死にたいという奇妙な欲求にとらわれた」!
- 阿久津隆@akttkc2025年4月29日読んでる寝る前は塵に訊く。ロングビーチで地震が起きた。「まずは悲鳴。次に塵。そしてなにかが崩れる轟音」。バンディーニは「僕のせいだ。僕がやったんだ」と思う。「お前がやったんだ、アルトゥーロ。あの部屋の、あのベッドの上で、お前がやったんだ」と思う。街灯が倒れてビルが割れる。世界の終わりがやってきたと誰かが言う。女が気絶する。 その場を離れ、歩道の縁石に腰をおろした。悔いろ、懺悔しろ、手遅れになる前に。祈禱を唱えた、だけど僕の口の中にあるのは祈りではなく塵だった。祈るのはやめた。でも、僕の生のなかでなにか変化が生じるだろう。いま、このときから、節度と厚意が生じるだろう。ここが分かれ道だ。これは僕のためだ、アルトゥーロ・バンディーニへの警告だ。 p.142 ここにびっくりした。悲惨な天災を、自分が起こしたこと、そして自分の未来のために起こったこととして扱う、エゴイスティックさを極限まで煮詰めたようなグロテスクな語りをやりきってしまうこと、それに感嘆した。
- 阿久津隆@akttkc2025年4月28日読んでる夕飯を食べ終えて少しすると寝床に入り、遊ちゃんの枕元には『らせんの日々』があった。僕は『塵に訊け』を開いてバンディーニはロングビーチの遊園地の近くのアパートに行って悲しい悲惨な時間を過ごした。「わが罪により、わが罪により、わが大いなる罪により」。きっつー、と思いながら読む。
- 阿久津隆@akttkc2025年4月28日読んでる明大前と代田橋のあいだで人身事故があって停まっている、という情報を得ておそるおそる駅に行ったらもう動いていた。そんなに遅れずに電車は来て、今朝も『塵に訊け』を読みながらの通勤だった。アルトゥーロ・バンディーニは今日も行き当たりばったりに動いていて見ていてハラハラする。有頂天と絶望をすごいスピードで行き来している。有頂天のときも絶望しているときも失礼なことをたくさんする。ものすごく近視眼的な、距離のない語りで、読んでいて振り回される。この感じを楽しめるようになるだろうか、と私は考えた。
- 阿久津隆@akttkc2025年4月25日読んでる寝る前は『塵に訊け』で、だからMCPのある暮らしというのは全部をAIに訊く暮らしということだ、Notionからこの情報取ってきて、Slackで返信必要なものないか教えて、返信しといて、明日の予定ってどうなってるんだっけ、そしたらNotionにそのミーティングのアジェンダつくっておいて。しばらくのあいだは『塵に訊け』を開きながら『AIに訊け』を読んでいる感じになってつまり目が滑って、もう誰も『Siriに訊け』とは言わないのだろうか。Siriは今どんな心地で暮らしているのだろうか。『塵に訊け』は小説を書く20歳のアルトゥーロ・バンディーニ青年の物語で青年は金がない、コロラドに住む母親に無心の手紙を書く、小説執筆の依頼が引きも切らずあるかのような嘘を書く。誰に対しても嘘をついている。受け取った金はまったく無駄に使い切ってしまう。いたたまれない心地になって、これもしかして僕読めないかも、という気持ちにもなる。読んでいたら悪い引きずり方をしそうな怖さがちょっとある。
- 阿久津隆@akttkc2025年3月27日読みたい買えなかった@ 大垣書店 麻布台ヒルズ店蔦屋書店になく、無性に読みたくなっちゃったので大垣書店まで。けっこう歩いた。海外文学の棚の前に立つとうっすらと期待が持てたので「あってもおかしくないあってもおかしくないあってもおかしくない」と思いながら棚を見ていったがなかった。
- 阿久津隆@akttkc2025年3月26日読みたいReadsの用事で未知谷に問い合わせメールを送ったところ、未知谷、と思い、ジョン・ファンテ、と思い、ぐんぐん読みたくなってきた。『満ちみてる生』が大好き。
- ヨイヨル@yoiyoru2024年1月17日読み終わったどうしても憎めないアルトゥーロ君、出会えて良かったすぎる ========== 【海外編】2024年読んで良かった本Best5 https://youtu.be/QbISdOKzxaA?si=lPgroN3jGNZQGjcg