のーとみ
@notomi
2025年5月23日

立ち読みの歴史
小林昌樹
買った
読み終わった
前に「かたちには理由がある」という本で一緒に仕事した一ノ瀬君が担当した本だからというのもあるけど、本好きの界隈での評判がものすごくいいので、とにかく読んでみる。
小林昌樹「立ち読みの歴史」、遅ればせながら読んだ。評判通りの面白い本。「本を読む」ことが楽しみだった時代の始まりから終わりまでを、資料を提示しながら見せてくれる。佐賀の積文館書店の二階のマンガ本売り場で、折り重なるように座ってマンガ読んでた小中学生の姿とか思い出す。本棚に近づけないくらいだったからなあ、あれ。私は私で、文庫本を何日もかけて丸ごと読んでた。だから「試し読み」と「立ち読み」の違いをきっちりと線引きする、この本の姿勢が嬉しい。本を読む側の視点で書かれた本を読むという行為の一面史。
書店の店頭を描いた絵や写真に、当たり前に立ち読みする人々が描かれてる、その当たり前の風景が、明治以降ずっと続いて、今も書店に行けば、少なくなったけど、やっぱり立ち読みしてる人はいて、私も雑誌はかなりの数、立ち読みしてる。雑誌店が町のあちこちにあった時代も、書店が座売りだった時代も知らないけれど、この本を読むと、それがどういうものだったか具体的に分かるのは、資料の使い方の上手さ。挿絵と文章がきちんと本の中で融合して機能してるから、紙の本で読む方が全然楽しい。しかも薄くてサラッと読める。この本自体が立ち読みに最適化されて作られているようで、何よりそれが楽しかった。
書店という形式が大きく変わらざるを得なくなっている今、本を売ること、本を読むことについて考えるための基礎資料なのに、読むのがこんなに楽しくていいのかというくらい面白い。やっぱり近代史の読み直しは重要だなあ。

