もぐもぐ羊 "ディディの傘" 2025年5月23日

ディディの傘
ディディの傘
ファン・ジョンウン,
斎藤真理子
P120 「何もいう必要がない」を最後まで読んだ。 いくつかの実際にあった事件や出来事について、なかったことにされた人たちの声を掬いあげるような話だった。 延世大学事件で結果として立て篭もることになってしまった学生たちに対して、女子学生に対して警察官が放った言葉があまりにも酷い。 「マンコはどうやって洗ったんだよ 汚ねえアマども」 また立て篭もりが長期に渡り、衛生用品がない中で生理がきてしまった女子学生は経血を垂れ流すしかなく、事件後に大学が通常に戻っても月に一度一定期間休むようになってしまい、恐らく事件の時の生理の記憶がトラウマになっているのではないか、と主人公たちは話していた。 セウォル号事件のデモの話や弾劾裁判の話など、それを経験した人たちの視点で書かれた物語はニュースで知るそれよりも臨場感があり、また参加者の切実な思いが伝わってきた。 読み終えるにはちょっとしんどいパートがあり(女性差別やセクハラ、パワハラなどの描写)時間がかかったが、読んでよかった。 巻末の訳者解説がとても丁寧で物語の解像度を上げてくれるので、もしこれから読む人は本文を読む前に訳者解説を読むといいかもしれない。 韓国語から日本語に訳出するにあたり、性別を区別しない韓国語表現を日本語にするために考えたことなども書かれていて著者の意を最大限に汲み上げようとした斎藤真理子さんの仕事にいつもながら素敵だと思った。
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