
松本真波
@_mm177177
2025年5月25日

家守綺譚
梨木香歩
読み終わった
読書日記
@ 自宅
私はこの作品で、主人公の綿貫が「自分の居場所」を獲得した事にとても感動を覚える。
所々に漏れる彼の本音(特に犬のゴローに対して)からは、どうも彼の実家暮らしで傷付いた過去が感じられる。
彼の名は「綿貫征四郎」、ということは四男の可能性が高い。それを踏まえて以下の彼がゴローに言ったセリフを見ると胸が苦しくなる。
「追い出さないだけのことだ。別に頼んでいてもらう訳じゃないからね。」
当時の価値観で言えば、長男が体丈夫であれば、そりゃ四男なんていても居なくても同じだろう。むしろ、居られる方が迷惑だったのかもしれない。
また、このセリフも考えさせられる。
「ゴローはその生来の甲斐性で確実に自分の生きる場所を確保してきたのだ。」
綿貫にとって、ゴローはなりたかった自分の姿そのものだったのではないだろうか。そんなゴローが、綿貫の側で寄り添ってくれていたのは内心嬉しかっただろうし、心強かったと思う。
そして最後。今まで亡き友人の実家で家守として住んでいることを何とも思っていなさそうな様子であった綿貫が、その実とても友人の事を大切に思っていたと感じさせる余韻ある文章がとても良かった。