
読書猫
@YYG_3
2025年5月25日

うそコンシェルジュ
津村記久子
読み終わった
(本文抜粋)
“工場の塀の前で、見覚えのある作業着の女性が、ゴミ袋の口の方を握り締めて、鎖鎌のように振り回していた。中山さんだった。何をしているのかと息を詰めて見守っていると、中山さんはゴミ袋の底の方を、思い切り塀にぶつけた。また何かが割れる、ガキャンとかビキャという音がした。
何をしているのか。変なことであるのは間違いないのだが、私は自分の疲れ切った部分がぱっと起き上がるのを感じた。
あの人、なんだか良さげなことをしてないか。”
(「第三の悪癖」より)
“誰かにお茶を出して話を聞くために生まれてきたんならそれでいいわ。”
(「誕生日の一日」より)
“うそすらついてもらえない(取り繕ってすらもらえない)ぐらいバカにされていることと、うそであしらわれる程度の人間であることはどちらがましなのだろう? この先意見が変わるかもしれないが、本当のことを言われてうんざりしたことが近い記憶としてある私は、後者のほうがましな扱いのように思えた。”
“他人にうそをつくことは、それ以前にまず自分にうそをつくという行程を必要とする。それが平気な人もいるし、苦痛な人もいる。吉子さんは苦痛に感じる人だったのだろう。最初はおもしろそうだとゲームにのっても、いざプレイヤーになると、自分がうそをつくのが好きではないことに気がついた。”
(「続うそコンシェルジュ」より)
“私たちはたぶん似ているけれども、かといって何もできない、と私は思った。けれども、息子が自分の焦燥を誰にも話さず、一人で静かに堪えようとしているのではないかということも感じた。私が満足いくまでべらべらしゃべってくれるわけではないけれども、それはそれで悪いことではないんじゃないのか。”
(「通り過ぎる場所に座って」より)
“「大事なところをむらさきで書くの、かわいいね」”
(「居残りの彼女」より)

