
ハム
@unia
2025年5月28日

異界の歩き方
村澤和多里,
村澤真保呂
読み終わった
中井久夫の思想は知らなかったけど、フェリックス・ガタリと当事者研究とそれぞれが絡み合う形で「ケア」の可能性を見据える良書。
「心」を取り戻すために「異界」に踏み出すことが、ガタリや中井久夫が言うように宇宙と自己を結びつけるうえで必要なこととしている。
それは存在と実体という言葉でも述べられていて、現代にかけては存在ばかりに目を向け実体を放棄しているために「異界」が失われていると。
統合失調症のような精神症状に対するアプローチとしてある「異界への旅」を考えることが環境問題にも通じているというのはかなり興味深く読めた。
当事者研究のようなアプローチは、一見すると精神的なケアにとどまっているようでいて、実は人間の「世界との関係性」の回復というもっと大きな射程をもっていることがよくわかった。
こうして見ていくと、当事者研究とは単なる「福祉」ではなく、ある種のミクロ政治であり、環世界の再設計であり、現代におけるケアとエコロジーの交差点そのものなのだと思う。
全体を通してかなり面白い視点ですごく新鮮に感じられて勉強になった。


