Matilde "小さなことばたちの辞書" 2025年3月18日

Matilde
Matilde
@i_griega_2025
2025年3月18日
小さなことばたちの辞書
小さなことばたちの辞書
ピップ・ウィリアムズ,
最所篤子
19世紀末の英国で編まれた『オックスフォード英語大辞典』には、すべての英語を網羅するという目的があり、果てしない時間と手間のかかる用例採集は、本当に狂気の沙汰だったと思う。“すべて”とはいえ、採用することばは出典が文字で残っているものとするという編集方針もあり、男性優位の社会の中で権威と結びつかない、特に庶民の女たちのことばは辞書からこぼれ落ちていった。女性ですら口にするのがはばかられることば、でも確かに存在し、発すればその意味を理解してくれる人が確実に存在することば。編纂者の娘であるエズメは、辞書に入れてもらえないそんなことばたちを集めていく。  やりたいことにも人にも恵まれたし、不幸だったとは思わないけれど、エズメの人生には悲しいことがあまりに多すぎた。発情したからといってその人を愛せる訳ではない。でもその後、愛する人に巡り会えた。この辺りが実は一番グッときた。  史実とフィクションがいい塩梅で混じりあい、辞書編纂の文脈でもフェミニズムの文脈でも楽しめるし、エズメという架空の女性の大河ドラマとしても面白い小説だった。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved