
橋本吉央
@yoshichiha
2025年5月30日

人はなぜ物語を求めるのか
千野帽子
読み終わった
よかった。
人間が物語、ストーリーの枠組みで世界を解釈しがちである、ということ自体はわかっていたつもりであったが、具体的にどのように、ということについて解像度が上がった気がする。
特に、公正世界の誤謬(中村文則作品で結構出てくる気がする)というフレームワークはまさにそうだな、と。自分が良いことをすれば、良いこととして自分に返ってくるはずである、悪いことをすれば悪いこととして返ってくる。そういう基本的な因果認識。
それがあるから逆に、悪いことが起こった時に、「自分が何か悪いことをしたのが原因なのだ」というストーリーの捏造をしてしまい、自分を苦しめる。
また逆に、一生懸命努力した自分には良い未来がくるはず、という物語予測に合わない現実に苦しむ。
そういうストーリー認識のフレームワークに気付き、手を離すことの価値を教えてくれる本。
また、『夜と霧』の「自分が人生に何を期待するかではなく、人生が(生きることが)自分に何を期待しているかである」という視点の転換が、ストーリー理解という視点で見ると味わいがまた出てきて興味深い。
誰しもストーリーから完全に自由になることはできないけれど、そんな自分をまずは認識するところから、なのだなあ。


