
Ken
@ken_book_lover
2025年5月30日

ガザに地下鉄が走る日
岡真理
読み終わった
アラブ文学研究者による、ガザ、ヨルダン川西岸、中東各国又は緩衝地帯(国境)に暮らすパレスチナ難民の姿を描いたエッセイ集。人権主体として認められない「ノーマン」としての難民、イスラエルによる占領によって生き地獄を「生きる」パレスチナ自治区の人々の絶望と希望を力強く文章にしている。
一貫して書かれているのは、国際社会及び各国市民によるパレスチナ/イスラエルに対する「無視」の残虐さである。「無知がホロコーストというジェノサイドを可能にしたのだとしたら、繰り返されるガザの虐殺を可能にしているのは、私たちの無関心だとも言える」と、我々の無関心を至る箇所で指摘している。
岡真理は、絶望の中生きてきたパレスチナ人が我々の平和な生を見た時に我々を許せるだうろか、と問うと同時に、あとがきにおいて、「パレスチナに希望があるとしたら、それは、私たち自身のことだ」と書く。無知/無関心が多くの命を奪う反面、知ること/関心を持つことが多くの命を救うのだと。
「この世界は、彼らがノーマンズランドのノーマンである限りは、『気の毒な難民』に対して、ときに気まぐれな温情は与えはしても、国民ならざる彼らが、『人間ならざる者』の分際で政治的権利、人間の自由を求め、世界が人間の新たな共同性へと開かれることを求めたとき、凄まじい暴力となって顕現し、彼らの上に襲いかかることになる。」