
ねこ
@notoneko25
2025年6月1日

赤い長靴
江國香織
図書館で借りた。
監然とし、それから日和子は笑いだしてしまう。くすくすと、そしてからからと。
日和子は思うのだが、笑うことと泣くことは似ている。
あしたはいつもの場所に戻れるのだ。そう思うと嬉しかったが、一方で日和子は、このまま造三と二人で、誰も知り合いではない場所にいたいと願った。浮遊と孤立のあいだみたいなことを、二人でずっとしていたいと思った。互い以外はすべて敵だと、思えたらいいのにと願った。
それが造三流の「おかえり」であることを、日和子は知ってしまっている。
その言葉の前に「おかえり」をつけてほしいと強制もしくは懇願することに、一体どれだけの意味があるだろう。結局のところ言語は人格なのだし、人格にない言葉を無理に発音したところで、それは音にすぎない。
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不思議な話だった。寂しいんだか嬉しいんだか安心してるんだか、よく分からなくなった。