たかとし "おいしいごはんが食べられます..." 2025年6月2日

おいしいごはんが食べられますように
読了。こういう話、好きだ。みんな善人で、みんな悪人。人の数だけ正解や正義がある話。芥川賞を受賞するのも頷けるし、話題になるのも分かる。手垢のついた、カッコつけた言い方をすれば「これはあなたの物語です」ということなのだろう。 食べ物を美味しくなさそうに表現できる著者の感性に驚く。このアンバランスな感じ、どこかで見た。そうだ、東京喰種だ! 食事って本当に面倒くさい。食事をすることを考えないといけない。生物としての宿命であるけど、それを考えなくて済んだらどんなに楽だろうかと思う。これまで生きてきて、食事について考えていた時間を集約したら何時間になるのか。食事にかけた金を勘定したら、一体いくらになるのか。 タイトルの「おいしいごはんが食べられますように」とは二谷の願いか、それとも芦川の刃物みたいな善意なのか。 弱者は守られるべき。だけど、弱者を守る者たちは誰に守ってもらえばいい? 多様性を受け入れるべき!は確かにその通りなのだけど、では、多様性を受け入れることで全員が幸せになれるのか。 そんなことを考えさせられる小説だった。
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