
amy
@note_1581
2025年6月2日

世界99 下
村田沙耶香
読み終わった
感想
フェミニズム
ジェンダー
村田沙耶香さんの新刊『世界99』読み終わった。読み終わったあとは「あ゛~~~~~~~~……』と天を仰いでしまう。村田沙耶香さんの小説を読んだあとはいつもそうなる。
主人公・如月空子は「性格のない人間」。彼女は所属するコミュニティに合わせて自分の人格を演じ分け、波風立てずに生きている。そんな世界で、人々に愛される謎の生物「ピョコルン」が登場。当初は可愛いペットだったが、やがて人間の子どもを産める、生殖能力を得たことで、社会は大きく変貌していく。
女性が社会で、家庭で担わされている役割をわかりやすく、それでいて決して誇張ではないかたちで描いており、されにその女性すら担っていた役割ができる別の生命体が誕生したら、はたして女性は今まで通りの役割から解放されるのか
自分が今までの人生でしてきたこと、そこはかとなく持っていた感情を丁寧に取り出してこちらに突きつけてくる。自分がいかに傲慢で、残酷で冷たい人間なのか。
そのいたたまれなさ、気まずさに耐えて、耐えて、耐えながら先を読み進めなければならない。それほど人間の、私自身のことを切り刻んで解剖をして"はい、あなたはこんなものでできていますよ"と目の前に突き出してくる。
おもしろいが、決して楽しいものでも愉快なことでもない。私自身も読み終わってすぐの今、考えたことをしっかりと言葉にはできずにいる。考えるべきこと、薄っすらと感じ取っていたのに、見て見ぬふりをしてきたツケが大きすぎる。
恐ろしいと思ったのは、作中の世界は現実とそう変わらず、また作中の未来も現実とそう変わらないということ。その事実にずーんと落ち込む
読んでしまうと、日常のあれこれに世界99で読んだ内容が入り込んでくる。世の中の女、母親という役割、社会的な弱者やマイノリティが求められること、マジョリティがマイノリティに求めるもの。それらが頭のなかにずっとあって、そのたびにぎくりとしてしまう。でも、その気まずさを知らないまま、のうのうとしているよりかはいい。気まずさを抱えて生きていかなくちゃならない。
世界に自分以外の人が存在する以上、他者への気まずさからは逃れられない。腹をくくる覚悟をくれる小説だった









