
かわら
@roof_kawara
2025年6月2日

湖まで
大崎清夏
読み終わった
五感を使って書かれ、こちらもまた五感を使って読む本だった。
「めまぐるしく変化する」とよく表現される都会のほうが実は単純化された記号の集まりで、泰然として揺るがないというイメージである自然の方が毎日その姿を変え、複雑で情報量が多い、という視点がまさに都心で疲労を溜め込んでは常にうっすら別のところに行きたいな〜と思い続けている自分の日々の根底にあるものを説明してくれたみたいでスッと入ってきた。
キーウとキエフのくだりで、別の本で検閲によって消されてしまうかもしれない詩に対して「あなたの言葉よ無事でいて」と書いていたのを思い出した。検閲という暴力によって消されようとしている言葉と、侵略してきた国の言語だからという理由で退けられた言葉は立場が全く違う。作者自身そのやるせなさを感じながらキエフという言葉に思いを馳せている様が伝わってきて、言葉たちに対する態度が本当に一貫してるなあと思った。こういう方だからこんなにきれいな言葉が紡げるんだろうな。
初めてサイン本というものをゲットしたが、紙の凹凸にインクが滲んでいるかんじがとても良い。
最後のお話に販促での疲れについてチラッと書かれていたのですみません…と思いつつ、特別な本になったのでやっぱり嬉しい。

