
めい
@meiji_chan
2025年6月3日

カフネ
阿部暁子
読み終わった
小説を読んで泣いたのは久しぶり。痛々しさや愛おしさが込み上げる言葉選びが染み渡る。と同時に、随所にある食べ物を用いた例えに遊びを感じて好感を持てた。最後は美しくまとまりすぎている気がしたけれど、これくらい美しくあってほしいという願いなのかも。
「どうせ本屋大賞」だから「弟が死んじゃったけど、おいしいものを食べてほっこり♪明日もがんばろ☆」みたいな話かと思っていたら、全然ゴリゴリの社会派だし、もっと切実に傷口が沁みるような苦しさに「食」が与えるごくささやかな、でも時に強烈な「希望」の話だった。「千切れそうな苦しみの中でも食べなければ生きていけない、悔しいけれど、食べられれば生きていけてしまう」というような。
素敵な作品だけど、こんなに優しくて温かい小説が他の作品を押さえて本屋大賞を取るのは、世の中が疲れて飢えているということかもしれないとも思う。
