かめりあ "心淋し川" 2025年6月4日

かめりあ
かめりあ
@cameria_7
2025年6月4日
心淋し川
心淋し川
西條奈加
夏になるとすえた匂いが立ち上る、流れの淀んだどぶ川と、そのどぶ川を挟んで立つ貧乏長屋が舞台。そこに住む住人たちの人生や、重苦しい心の内、時に深い闇が描かれている。 涅槃の雪を読んだ時も感じたが、西條奈加の作品は昭和のよく出来た時代劇ドラマを観ているような印象を受ける。映像が目に浮かび、先の展開もなんとなく読める。欠点のない優等生みたいな小説だと思いながら読み進める。 けれど、読み終えた後には胸の内にずっしりと杭が刺さっている。作中で描かれた、ままならない人生を懸命に生きる人々の苦しみや喜びが、じわりじわりと杭から滲み出てくる。 多分、人間を書くのが上手いんだと思う。老若男女、育ちも性格も背景も全く違う人々が出てくるが、その全てが丁寧に書き上げられている。 一体どれだけの人間を見てきたのだろう、と思う。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved