
雨
@___amadare
2025年6月4日

工場日記
シモーヌ・ヴェイユ,
田辺保
読み終わった
"ひどい疲れのために、わたしがなぜこうして工場の中に身をおいているのかという本当の理由をつい忘れてしまうことがある。こういう生活がもたらすもっともつよい誘惑に、わたしもまた、ほとんどうちかつことができないようになった。それは、もはや考えることをしないという誘惑である。それだけが苦しまずにすむ、ただ一つの、唯一の方法なのだ。ただ土曜日の午後と日曜日にだけ、わたしにも思い出や、思考の断片がもどってくる。
このわたしもまた、考える存在であったことを思い出す。わたしは、自分がどんなにか外的な事情に左右される者であるかを見てとると、ほんとうにぞっとする。そういう事情のためにある日、週一回の休みも与えられない仕事に従事しなければならない境遇につきおとされれば、それでもうおしまいなのだ──そしてこのことは、とにかくいつでも起こりうることなのである──そうしたら、わたしは、おとなしい、じっと苦痛をこらえる(少なくとも、自分ひとりのためなら)、牛馬同然の人間になりさがってしまうであろう。"(p.58)










