ヨル "がっこうはじごく" 2025年6月7日

ヨル
ヨル
@yoru_no_hon
2025年6月7日
がっこうはじごく
『書くということは、それが伝わるかもしれないことである。そこに宛先があるなら、その言葉はだれかに読まれる。読まれることを待つ。武器、というほど堅固なものではないかもしれず、お守り、もまた安易かもしれない。書くことでわたしはどうなるのだろう。エンパワーされて強くなるのだろうか、むしろもっと弱くなるのだろうか。自由になる。こんなにも不自由だったことを知る。わたしはわたしのことをほんとうには全然知らないことを知る。どんなことでかなしく、どんなことで笑うのか、どんなことがわたしをはげしく揺さぶるのか。あったことを書く。思ったことを書く。真に内省とは、自身のなかへなかへ潜ってゆくと同時に、書くたびにひらかれていくことだ。いま、ここにひらかれている。どこにでもいるような、とるに足らない自分が、けれどいまここにいる。意味を問うのではない。ただそこにあることを書く。自分には何もないと、ふてくされていることを書く。うれしくもかなしくもない、凪いだこころを写す。ふかく、息を吸う。風が自分の身体をさらってゆくことを書く。影がいつもより濃いことを書く。目を閉じればいつかの記憶が引きずり出されて、ここにやってくる。だれかの声がする。聞いたこともないような、それは知らないはずなのになぜか懐かしい。「ほんとうに思っていること」は、ときにわたしを加速させる。思考が、言葉がいつしかわたしを追い抜いて転がり、わたしがそれについてゆこうとするときこそ、それが書き手のこうふくなのかもしれない。』(p44) 息子と半べそをかいた日だった。学校のこと、友達のこと、ひとつの社会、ひとつの組織...そこに組み込まれた息子。これからもっと嫌なことも悲しいことも経験して乗り越えなきゃいけない日もきっとくる。小学生だからって甘くない世界。残酷とも思う。ただ生きているだけですばらしいことなのに、それを許さない世界を時々怨む。
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