
らずべりー
@Raspberry_latte
2025年6月8日

母性
湊かなえ
読み終わった
読破!
流石は湊かなえと言うべきか、うわ……と思う読後感でした。
問題から目を背け続け不倫していた父やその娘を自死へ追い込んだ挙句、貧乏生活に耐えかねて急に姿をくらます不倫相手の仁美に対する怒りが残りました。なぜそんなことが出来るのか。とくに仁美に関しては人様の父親を奪っておいてよくもまあ「お前を助けたせいでお前の祖母が死んだ」などと言えるものだな、と。
母親も母親でやはりロクでもない人物だと感じました。あろうことか娘を殺そうとするなんて。神父に見せるための独白を記したノートの中ですら彼女は保身に走り、「娘を強く抱きしめた」と記述しています。自分が殺そうとしたのに。なんて醜い人間でしょうか。
また、娘が首を吊るまで彼女の名前が「清佳」であることが書かれていないのが印象的。
冒頭に出てくる新聞記事に出てくる、転落した生徒が清佳だと思っていたのですがどうやら途中に出てくる高校教師が清佳であると読み終わったあと暫く考えて気づきました。叙述トリックというやつだろうか?思えば途中で引っかかるところはありました。
217pで、教師が「ヒデ」と呼ばれる無愛想なアルバイトを「英紀」であると思い至る描写があり、なぜ彼女が英紀であることを知っているのかと怪訝に思いました。
このような暗い幼少期を過した清佳が母性について「子どもを産んだ女が全員、母親になれるわけではありません。母性なんて、女なら誰にでも備わっているものじゃないし、備わってなくても、子どもは産めるんです。」という発言をするのが彼女の経験に基づく深い言葉であると感じました。
最後はまるで大団円かのように終わっていますが、あのような経験を経ても清佳の母親は清佳の妊娠を知って「おばあちゃんが喜んでくれる」と発言をするところに、人は簡単には変わらないことが表れていて背筋が凍りました。また清佳も母親のようにならないようにするあまり自分の子に愛情を押し付けて不幸の再生産になるのではないかと不安な最後でした。





