nogi "地球の果ての温室で" 2025年6月8日

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@mitsu_read
2025年6月8日
地球の果ての温室で
地球の果ての温室で
カシワイ,
カン・バンファ,
キム・チョヨプ
キム・チョヨプさんの本は「わたしたちが光の速さで進めないなら」に続いて2冊目。 これは長編だったので、1冊目とは違う感覚で読んだ。 舞台も、1冊目は宇宙を近くに感じるものが多かったけど、今回は、湿った土や濡れた森の色の濃さ、人間のどうしようもない愚かさと死のにおいと植物の静かな力強さが根底にあった。 こんな状況にいたら人はこんなふうに他者を排除して行動するだろうな、共同体は長く続かないだろうな、それが生存本能かもしれないけれども、人はなんて醜く、世界(社会)は信じるに足りないのだろうと思った。 でもどうしようもない人のなかにも信じていい感情があって、優しさがあって、かけ違えて、壊してしまった関係も、意味がなかったわけじゃない。 レイチェルとジスの関係性は、友情でも性愛でもない、鬱蒼とした森の奥の、したたる雨の下の、捻れて歪んでしまった根のような執着の形をしていて、けれども最後には、花が咲いて種を落とし、昇華されたような気がした。(いや、昇華なんて言葉でまとめる必要もない関係の終着であったことこそが救いなのかもしれないとも思う) p76 〝「わたしもあるとき気づいたんだ。嫌いなやつらが滅びるべきであって、世界が滅びる必要はないって。それからは、長生きしよう、死んでたまるもんかって心に決めたんだ。そうして嫌いなやつらが滅びていくのをとくと見届けてやろうってね」 「成功したんですか?」 「さあ。そうは思わない。やつらもまだのうのうと暮らしてるところを見るとね。でも、そう思いなおしたおかげでいいものもたくさん見られたよ。世界が滅びてたらきっと見られなかったものをね」〃 p370 〝「心も感情も物質的なもので、時の流れを浴びるうちにその表面は徐々に削られていきますが、それでも最後にはある核心が残りますよね。そうして残ったものは、あなたの抱いていた気持ちに違いないと。時間でさえもその気持ちを消すことはできなかったのだから」〃
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