
せいこ
@seiko_415
2025年6月8日

地球にちりばめられて
多和田葉子
読み終わった
6人の語り手がバトンリレーのようにひとつの物語を紡いでいき、すべての人間が主人公となり、言語・人種・国籍・性別・年齢などあらゆる境界が解体され、なだらかに繋がっていく小説でした。
話の中でHirukoはじぶんと同じ母国語を話す人を必死に探します。言葉の力は偉大ですが、発し手と受け手が居なければ、その力は十分に発揮されません。
特に母国語は自分を守り、形作るものだと思ってます。わたし成田空港の帰国ロビーの階段に「おかえりなさい」って書いてるの初めて見た時泣いちゃいましたからね。
やはり、私たちがいま確かに持っている言葉を大切にするためには、ことばの良い発し手、良い受け手でありたいとしみじみ感じました。
しかし同時に、言語や国、人種、性別、年齢は同じ地球上に暮らしている我々に境界線を引くものであります。その境界線は良い意味でも良くない意味でも非常に強いものですが、この物語にはそれらの境界を認識しつつもするりと移行していく人々が沢山でてきます。
その人々が境界線を移行できたのはなぜか。境界よりも強い「個人」があったからだとわたしは考えています。
言語がすべて解体され産まれた場所の気配すらなくなっても、アイデンティティを保つには、どのような個人であることが必要か、を考えさせられる物語でもありました。


