橋本吉央 "本をともす" 2025年6月9日

本をともす
本をともす
小谷輝之
本屋で働いた経験があるわけではない小谷さんが、本屋をやり、自分の理想の選書、場所づくりを追い求めつつ、同時にそれを経済的にも成り立たせるよう尽力していく様子が丁寧に誠実に書かれている。 小谷さんはご自身を「読書家ではない」と書いており、本屋をやりつつそのように言うことは勇気がいるのではないかと思うが、しかしよく考えれば確かに、たくさん本を読むから本屋をやるわけではない。本を人に届けたい、あるいは本を通して人に何かを伝えたい、価値を作りたいと言うことが、本屋であることの中核なわけで、そういう意味で、世の中で言われる「本の虫・活字中毒的な人」が自分の趣味でやるのとは全然違うのである。 自分自身も昔から大量に本を読んでいたクラスタというわけではないので、「自分がたくさん本を読むから」と言うことだけでない、本屋をやることの意味みたいなものを考えることができてよかったように思う。 本書の中では、開店初年度からの売り上げ冊数など詳らかに書かれているが、 本屋、はじめましたのTitleの事業計画と実績と同様に、数字として参考にできるものは多い気がする。 あとは、選書の際に、出版社で「ここからは仕入れない」と決めているところがある、と言うのも面白い。ヘイト本など差別を助長するような本を出している出版社はお断り、と。そう言うのは、独立系書店でこそやれる良い取り組みだなと思う。
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