本の虫になりたいひと "月と六ペンス" 2025年6月10日

月と六ペンス
月と六ペンス
サマセット・モーム,
William Somerset Maugham,
金原瑞人
これはゴーギャンについて書いていると思って読んでいたが、あとがきで筆者はその意図で書いたのではないことを知った。 しかし、わからない。どう考えてもストリックランドはゴーギャンで筆者が語り手の物語にしか思えない。 ストリックランドはあまりにも人間離れしていた。彼の魂は俗世を離れていた。訳者あとがきで「ストリックランドは最も自由であり、かつ不自由であった」という内容の文章があったが、それを読んだ時「自分を制することこそが自由なのだ」と過去の偉人が述べていたことを思い出した。ストリックランドは語り手に絵を描いても意味なんて無いなどという警告を受けた時に「川に落ちたらなんとやら」という返答をしたが、私はそれが好きだ。あとはなるようにしかならないという、ざっくばらんさが好きだ。偉人から見るとストリックランドは絵を描く自分を制することができない彼を不自由だというだろう。しかし、それでいいではないか。四方が天にも届く高さの地層に囲まれていても、その地層に気づかなければ、泳いでいる彼にとっては果てのない海でしかないのだ。彼は、どこまでも自由である。
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