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@bunkobonsuki
2025年6月11日

きりぎりす
しまざきジョゼ,
太宰治
画家として成功し、傲慢を膨らませる夫。
その過程を見ていた妻の心中が、手紙のように吐露された短編。
この短編は、もしかしたら人間失格のパラレルワールドかもしれない。人間失格の大庭葉蔵が画家として成功し、家庭を持ったら・・・というifとして読んでいた。
「私たちの知っている葉ちゃんは、とても素直で、よく気がきいて、あれでお酒さえ飲まなければ、いいえ、飲んでも・・・神様みたいないい子でした」(人間失格)
「私は、あなたこそ、その天使だと思っていました。」(きりぎりす)
夫の心を伺うことはできないが、妻が嫌っていた他人に対する賛辞や陰口も、大庭が持ち前のサーヴィス精神でやっていたと考えると、なんだか寂しくなる。

