ユメ "虎のたましい人魚の涙" 2025年6月2日

ユメ
ユメ
@yumeticmode
2025年6月2日
虎のたましい人魚の涙
なんて瑞々しくて、生々しいんだろう。くどうれいんさんのエッセイを読むと、そのことに圧倒される。 この『虎のたましい人魚の涙』は、くどうさんが兼業作家として会社員の仕事と作家業の両立に忙殺されていた時期に執筆されており、彼女は常に見えない何かと闘っている。忙しさで限界までアクセルを踏む生活に、芥川賞候補に選出された重圧、くどうさんは苦悩や苛立ちを率直に曝け出す。文章に手触りがあるとしたら棘々しているかもしれないぐらいで、私はそれに感嘆してしまう。 人によるのだろうが、私は自分の怒りや悲しみといった感情を文章にすることが苦手だ。言葉にしてはっきりと記録することで、辛さが可視化され、余計に増大するような気がしてしまうから。だから私は、たとえ嫌なことがあっても、自分しか読まない日記にさえ当たり障りのないことしか書けない。そんな私にとって、胸中をこんなにも棘々しくそれでいてぴかぴかと光る言葉で綴れるくどうさんの芯の強さは眩しく、彼女のエッセイを読めることがとても嬉しい。
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