真魚
@ms_mn
2025年6月14日

夕暮れに夜明けの歌を
奈倉有里
読み終わった
読んでよかった。表面的な…世界史的な時系列の理解はあったけど、ロシア文学もロシアの社会事情もうっすらとした知識と理解しかなく、地理関係も曖昧だったので。子どもの頃、米原万里さんのエッセイが好きだったので気軽な感じで最初は手に取りました。
回顧録的エッセイに登場する人物たちは、それぞれ広大なロシアの、特色ある地域の出身で、生身の人生を歩んでいることが描かれていて、乏しい知識でも境遇をリアルに想像することができた。
学生生活のディテールも具体的で、寮に家電がないとか大学がお城で建物は素晴らしいけど大学図書館が充実していないとか、政治的な理由でカリキュラムが影響を受けるとか…気が沈む内容を文学と愛が彩ってくれるおかげで、苦しいけど読み通すことができた。
ロシア語やロシア文学という懸命になれるもの(文字通り命がけだろう)と出会えた作者を羨む一方で、こんなにもひたむきな人だから出会えたんだろうなぁと思う。
民族、宗教、言語、金銭的格差という諍いのもとになりやすいテーマは、日常生活の延長であるゆえに避けることができない、ということを思い出させてくれる良書でした。



