
fuyunowaqs
@paajiiym
2025年6月15日

水の流れ
クラリッセ・リスペクトル,
福嶋伸洋
読んだ
NotForMe
わからないまま読み終えた。
目を覆いたくなるほどの激しい自己愛が溢れだす文章だった。徹頭徹尾自身の内面にしか関心がない人のエッセイのようで、理解してほしいとくり返しながら対話や受容を試みる姿勢の見えない一方的な告白だから、読み進めるにつれ嫌悪感に苦しむ時間が長くなっていった。また本書の中で、たびたび絵を描くという行為について語られるが、はたして"わたし"が絵を描くというのは本当かどうか、比喩なのではとも思う。言葉選びは詩的でも、全体のテンポもリズムもめちゃくちゃで、とても詩歌に喩えられるものではない。秩序のない自由はただの混沌だろう。123ページに書かれたある箇所に、この本のすべてがまとめられていると思った。
"わたしがあなたに無秩序に書いていることはよくわかっている。でもそれは生きるのと同じこと。わたしが扱うのは「見つけたもの」と「失ったもの」だけ。"
装幀は佐々木暁さん。とても美しい佇まいの一冊で、余白をぜいたくに使った組版も凛としている。四六判の変形で、コンパクトなのに存在感のある、優れた造本だった。


