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@kyri
2025年6月15日

文化の脱走兵
奈倉有里
読み終わった
@ 自宅
『夕暮れに夜明けの歌を』が本当に素晴らしかったので読んですぐに注文した本『文化の脱走兵』。奈倉さんの静かで穏やかな筆致はそのままに、2022年から始まったロシアによるウクライナ侵攻の影が落ちるなか、何を見て、何を感じ、何を心のよすがに生きていくか、人間性を失わないためには何を大事にするべきか、奈倉さんだけの言葉で語られる。好きなものや好きなことを大事にすること、それは誰にも脅かされないこと、常に心に脱走兵を住まわせること。
だけど、いくら心に脱走兵を住まわせていても、それが心の中にいるだけではどうにもならなくなってきていることも事実だと思う。このエッセイが書かれてからも、ウクライナ侵攻の先は見通せないし、イスラエルは今度はイランを攻撃した。私個人の心の中の脱走兵は、私にしか作用しない。世界にいる人ひとりひとりが心に脱走兵を住まわせて、自分の内面世界を大事に抱え続けたなら、そうして非戦の人たちが増えていくなら、それに越したことはない。だけど、権力はそのやわらかな脱走兵たちを蹂躙していくだろう。抵抗すれば逮捕されたりするようになってしまった世界の中で、それでもまだ日本においては逮捕されないということを考える。抵抗の権利だけは脅かされたくない。この先どうなるかわからないけど。






