
とめ
@m_ake
2025年6月20日

シベリヤ物語
堀江敏幸,
長谷川四郎
読み終わった
ちくま文庫の新刊で気になっていて購入。これが、素晴らしかった。
戦中にシベリアで捕虜になった著者が描くシベリアのはなし。
捕虜だし、シベリアだし、状況は過酷なんだけど、なんとなくほのぼのした感じがある。プリーモ・レーヴィの「休戦」をなんとなく彷彿とさせる。戦争は終わって、しかし帰れなくて、そこで生きるしかない。しかし、すぐ背中に死が忍び寄っている。炭坑での死、逃亡による死…。死がすぐそこにある。
登場するソ連のひとびとも、そしてモンゴルのひとびとも魅力的なんだな。
丸山(だれ?)や、ナスンボ、アンナ。そして「勲章」の佐藤少佐。敗戦後も軍隊の序列を持ち込むばかばかしさと、愚かさを、ユーモアと皮肉たっぷりで描く。
「犬殺し」がまたとにかくつらく…
そして、さいごの「にげていく歌」が、また、つらい。
プリーモレーヴィのときも思ったけれど、ユーモアたっぷりに描くことでしか癒されない傷だったのだ…そして、その傷は、どんなに描いても決して癒されないんだ、ということを見せつけられてつらい。