シベリヤ物語

11件の記録
- とめ@m_ake2025年6月20日読み終わったちくま文庫の新刊で気になっていて購入。これが、素晴らしかった。 戦中にシベリアで捕虜になった著者が描くシベリアのはなし。 捕虜だし、シベリアだし、状況は過酷なんだけど、なんとなくほのぼのした感じがある。プリーモ・レーヴィの「休戦」をなんとなく彷彿とさせる。戦争は終わって、しかし帰れなくて、そこで生きるしかない。しかし、すぐ背中に死が忍び寄っている。炭坑での死、逃亡による死…。死がすぐそこにある。 登場するソ連のひとびとも、そしてモンゴルのひとびとも魅力的なんだな。 丸山(だれ?)や、ナスンボ、アンナ。そして「勲章」の佐藤少佐。敗戦後も軍隊の序列を持ち込むばかばかしさと、愚かさを、ユーモアと皮肉たっぷりで描く。 「犬殺し」がまたとにかくつらく… そして、さいごの「にげていく歌」が、また、つらい。 プリーモレーヴィのときも思ったけれど、ユーモアたっぷりに描くことでしか癒されない傷だったのだ…そして、その傷は、どんなに描いても決して癒されないんだ、ということを見せつけられてつらい。
- ホリモト@wheretheois2025年1月2日読んでる@ カフェ「人さまざま」 他者について決してわかりきることはない、それどころかそのほとんどはわかるはずもなく、私から見た断片が印象としてあるのみ、という感じ。 その印象が文章になって開放されたとき、小説として成り立つことの不思議さ。