
はる
@tsukiyo_0429
2025年6月13日

読み終わった
「その水になじめない魚だけが、その水について考えつづける」
この言葉をSNSで知り、読もうと決めた。
以前読んだ『カフカ断片集』を編訳された頭木さんのエッセイだ。
手術で入院中、一気に読んだ。
入院期間は短かったが、その間、私の話し相手になってくれた一冊だ。
緩やかに素直に綴られていく文章は、入院中でも負担にならず、楽しく読み進めることができた。
普段は当たり前のように受け流していたことを、ちょっと立ち止まって眺めてみるような本だった。
世の中で「良し」とされていることだけではなく、そうではないものも含めて、「これでいいんだ」と、考え方のゆとりを生んでくれた。
読む前よりも、物事を穏やかに捉えられそうな気がした。
カフカの話がたくさん出てきたので、またカフカの作品を読んでみたくなった。
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その水にしっくりなじめる魚は、その水のことを考えなくなる。その水になじめない魚だけが、その水について考えつづけるのだ。
(P139)
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カフカは炭坑のカナリアのような人だと思う。他の人が平気なうちから、まず最初に苦しみだす。そして、文学という悲鳴をあげてくれる。それによって、鈍感なこちらも気づける。
私はずっと、カフカというカナリアを頼りに生きている。
(P177)
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『明かりがないと生きていけないという思い込み』
人生のほうも、暗いままなのは同じでも、そうやっていくらか平気に歩いていけるようになるといいのだが、こちらはなかなかそうもいかない……。
ただ、明かりがないと生きていけないという思い込みは、少しは減ったかも。
本のたとえは、懐中電灯と言うのはやめて、今は次のように言っている。
明るい道を歩いているときには、ひとりでもぜんぜん平気です。でも、日が暮れて真っ暗になった道をひとりで歩かなければならないとなったら、やっぱり心細いですよね。そんなとき、いっしょに歩いてくれる連れがひとりでもいたら、ずいぶんちがいます。そういう人が見つからないときでも、いつもいっしょにいてくれるのが本です。
(P183)


