本屋lighthouse "私が諸島である カリブ海思想..." 2025年6月19日

私が諸島である カリブ海思想入門
直線的で、攻撃や支配や競争の標的となる他者を必要とするミサイル的価値観。円環的で、相互歓待の姿勢を基本とするカプセル的価値観。前者を西洋的、後者をカリブ海的とする論が展開される第9章。 ミサイル的価値観は「敵」を必要とするナショナリズム/ファシズム理論とも軌を一にするように思える。ここ数日で地獄度合いを増しているイスラエルの動きも同様で、パレスチナのみならずイランまでをも攻撃対象として認識し、文字どおりにミサイルを撃ち込んでしまっている。 しかしここで思うのは、おそらくイスラエルは自らをミサイル=攻撃や簒奪の主体としてではなく、むしろその被害を受けている側として自らを認識しているのだろう、ということだ。つまり、奪われているから奪い返しているだけだ、と考えている。これは「日本人ファースト」的な言説に期待をしてしまう者らにも共通する認識なのだと思う。かれらはミサイルを撃つ側ではなく撃ち込まれている側だと感じている(「我々の日本に外国人が侵入している」という認識なのだから、その理路が行き着く先としては必然とも言える)。 そうなると、イスラエルや排外感情を募らせている者らに「ミサイルを撃ち込むなんてどう考えてもダメだとわかるでしょう」と言っても伝わらない、ということになる。これは強硬的なシオニストや排外主義者たちだけの認識ではない。後者に的を絞れば、大多数の日本人が、ミサイルが撃ち込まれている存在を「自分たち」だと誤認している。どうすれば伝わるか、誤認をあらためてもらえるか、いままでと同じやりかたでは状況は変えられない。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved