
スガワラ
@spindle9
2025年6月20日

テヘランのすてきな女
金井真紀
かつて読んだ
テヘランでは整形手術が一般的らしい。
特に豊胸と、鼻を削り頬をふっくらさせて丸顔にする手術。
平たい顔族丸顔部門代表の自分からすれば信じられない話だが、彫りの深い顔立ちがスタンダー
ドな彼の国では、鼻が低く丸い顔は人気があるのだそうだ。
全身をゆったりした服で覆っているのに豊胸手術??と思ったが、読み進めると手術の理由は
「自分の体を好きになるため」。女性が不自由な立場に置かれていても、自分の体は自分のもの。「こうなりたい」から「こうする」。手術のために、わざわざ地方から出てくる人もいるのだとか。
日本人の著者が、ベリーショートの通訳さんを介してイランに生きる女性たちに会いに行ったス
トーリーがまとめられている本作。
社会の抑圧、宗教的規範、なんのその。不自由の中でも自分の人生を生きる、親しみやすく魅力
的で、芯のある素敵な女たち。「世界で一番かっこいい。」帯の文句は伊達ではない。読み終えた
時は友人が増えたような錯覚を覚え、遠い異国の地の彼女たちと、ハグを交わしたくなった。
この本に出会わなかったら、テヘランに生きる女性達の事を考える事などなかったし、テヘランに
女性だけの相撲チームがあることも知らなかった。イスラム圏でも、女性が1人で生きていける事も知らなかった。世界が、彼女たちを害する決定を、彼女たちの国の外で粛々と進めていく、その様のあまりにグロテスクな事を知らなかった。
いかした美容室のお姉様は、もう一人の通訳のお茶目なおじさんは、アフガニスタンから逃れてきた一家は、サッカーチームで「鷹」と呼ばれた彼女は。無事なのだろうか。本の中の友人達の安否を思うと、ニュースを見るたびに胸が締め付けられる思いがする。
今まで流し見していたたくさんのニュースの向こうにも、たくさんの「彼女たち」がいたのだろう。こんな形で、読書の力を思い知らされたくはなかった。
どうかどうか、世界中の「彼女たち」が無事でありますように。1日も早く、「彼女たち」に自分の人生が戻りますように。





