
gato
@wonderword
2025年6月21日

モスクワの伯爵
エイモア・トールズ,
宇佐川晶子
かつて読んだ
思いだした
◆映画『グランド・ブダペスト・ホテル』を見て思いだした本 その①
映画は面白かったんだけど、結局はゼロみたいな出自の人間がグランド・ブダペスト・ホテルに迎え入れられるにはベルボーイにでもなって成り上がるしかない、客として迎え入れられることはない、というところにあえて目を瞑って、高級ホテルを古い時代の善なるものの象徴として描くのはブルジョワ趣味がすぎるんじゃないの?と庶民としては首を捻ってしまう。そしてこの『モスクワの伯爵』を読んだときもだいたい同じ弱点が気になったのだった。
映画はグスタヴも貧民出身らしいことがほのめかされていたり、「ブロンド云々」のくだりでホテルの客層の浅薄さが表されていたりしたので、ホテルは完全な理想郷じゃないし懐古趣味だけで作られた作品でもないのはわかる。そしてこの小説のロストフは元貴族で、自分の財産とホテルがまさに接収されていく渦中におり、成り上がりのグスタヴの悲哀とはまた違う余韻を描いている。
