阿久津隆 "石灰工場" 2025年1月17日

阿久津隆
阿久津隆
@akttkc
2025年1月17日
石灰工場
石灰工場
トーマス・ベルンハルト,
飯島雄太郎
「オーストリアにはまさに風光明媚な土地がある。それこそいわゆる風光明媚な土地しかないくらいだ、とヴィーザーに言っていたとのことだ。何百、何千というその手の風光明媚な土地がこんなに小さな地域に寄り集まっている国はほかにはない」とあってなんと続くのかと思ったら「なんて有害なんだろう」と続いて吹き出した。 取り組むべき、あるいはすでに一定の成果を上げている精神的な仕事にとっていわゆる風光明媚な土地ほどに有害なものはないのだから。どれほど成功が約束された仕事であっても、美しい街に行くと台無しになるし、美しい景色は脳を惑わせる。いわゆるすばらしい自然の中にいると頭がうまく働かなくなるんだ。知的な仕事を志し、やり遂げようと思ったらオーストリアほど向いてない土地はない。(…)自然美のもとではどんな創造性も役に立たない。つまりオーストリアとはアイディアの墓場に他ならないんだよ。才能が一瞬きらめいたかと思ったら瞬く間に風に吹き払われる荒野、それこそが私たちの国なんだ。美しいばっかりに故郷は私たちにとっていつまでも終わらない失敗であり、屈辱であり続けている。 p.202 ディスれているんだかいないんだかよくわからないが、ディスれていないからこそか、読んでいて物悲しくなるところだった。
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