犬山俊之 "愛しいあなた" 2025年6月22日

愛しいあなた
愛しいあなた
劉梓潔,
明田川聡士
現代台湾を生きる女性の「愛と痛み」を描く短編小説集。すごくセンスを感じる生き生きとした文体。一読ファンになりました。 ただ性愛に関する描写が多いので、そういうのが苦手な人には勧めにくいのですが、「エロ」ではない性の話は貴重です。 生殖の負担を一方の側にだけ押し付けながら行われているセックスという行為の圧倒的不公平さをひしひしと感じさせられ、今更ながら唖然としました。もっと若い時に読めたらよかった。 実は、表題作『愛しいあなた』のタイトル、原著では《親愛的小孩》となっており、「子ども(小孩)」という語が入っています。まだ見ぬ子、名前もない我が子に対して、心の中で思わず語りかける言葉、「親愛的小孩」なのですが、ここで(例えば)「我が子よ」と日本語に訳すと、全然違うニュアンスになると翻訳者・編集者は考えたのでしょう。その判断は支持するものの、日本語で「あなた」と聞くと恋愛対象のことかと思ってしまう人がほとんどなのでは、と心配にもなります。ちょっと難しいところ。 現代の台湾で「子を持つ」、また「子がいない」ことが女性にとってどんな意味を持つのか深く考えさせられます▼ http://www.kankanbou.com/books/kaigai/taiwan/0546
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