ヨル "この世の喜びよ" 2025年6月23日

ヨル
ヨル
@yoru_no_hon
2025年6月23日
この世の喜びよ
この世の喜びよ
井戸川射子
井戸川さん三冊目。芥川賞受賞作と聞くと少し構えてしまうのだけど、彼女の文体は、流れのままにただひたすら読むのが一番ベストな読み方だと思っている。今のことから過去を思い出す文体は滝口悠生を思い出させ、流れ出るような言葉の連なりを感じるような文体は、多和田葉子やアリ・スミスを思い出させた。 「暇な時にはいつも思い出しているはずの、幼い頃のあの子たちの姿も、誰かに語ろうとすれば飛んでいってしまう。」(p25) 子育てをはじめたばかりの頃「わたしの小さい頃はどうだった?」と母に聞いて「忙しすぎて忘れちゃったよ」とよく言われていたことを思い出す。そんなばかなと思っていたけど、現にわたしも忘れてしまっている。アドバイスを聞くくせに、やり方を否定されたり、わたしの時はこうだったこうしてたなんて、説教じみたことも言われたりすると、もういいよ、となってしまっていたことも。これからはわたしが子どもから言われるのだろうな。 教えるなんておこがましい。「あなたに何かを伝えられることの喜びよ」そう考えて子育てできたら、わたしも息子も、もっとのびのび生きていけそうな気がしている。
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